この特集記事は日本経済新聞社によって制作され、日経電子版にて2019年4月1日から5月31日まで掲載されました。

ヤマハ モーター マニュファクチュアリング コーポレーション オブ アメリカ

ヤマハの飛躍支える
北米経済の要衝

海外ビジネスは拠点選びが成否を左右する。多くの企業が物流、市場規模、人材確保、公的支援など多数の条件がそろう立地を探して苦労するなか、注目を集めるのが米国南東部のジョージア州だ。グローバルなビジネスに必要な好条件を満たし、日本、中国、韓国など世界から企業が集まる。進出後30年にわたって成果を上げ続けているヤマハ発動機の現地法人でトップを務める桑田一宏氏に、ジョージア州の魅力を聞いた。

ゴルフカーや水上バイクで市場開拓

 

yamaha

Yamaha Motor Manufacturing Corporation of America(以下YMMC)は、アトランタ市内から車で30分ほど南のニューナンに工場を構える。総面積280エーカー、東京ドーム24個分という広大な敷地で2棟の組み立て工場と3棟の物流センターを運営する。YMMCは1986年に設立され、88年から生産を開始。ゴルフカーの「G2シリーズ」からスタートした。世界初の4サイクルOHVエンジンを搭載した同モデルは、ガソリン車とは思えない静かさで人気を得たという。翌89年にはウォータービークル(水上バイク)、98年に四輪バギー車(ATV)、2002年にサイド・バイ・サイド(SXS)の生産を開始し、これまでに合計380万台の製品を世に送り出している。

技術力とニーズ適応で地元から信頼

golf cartヤマハと言えばバイクが世界的に有名だが、地域のニーズに合わせて投入する製品を機動的に取捨選択してきた。「ヨーロッパではバイクの売り上げが60%を占めるが、アメリカでは15%ぐらい」と語る桑田氏は18年1月からYamaha Motor Corporation U.S.A.(YMUS)の社長を務める。欧州地区でのマーケティング担当者やYamaha Motor Europeの社長を務めた国際派で、現地市場への適応の重要性を熟知する。バイクなどで磨いた技術力を強みとするヤマハのゴルフカーは、米国市場で存在感を高めている。過去9年で全米の2511コースがヤマハのゴルフカーを採用し、全米ゴルフコース所有者協会(National Golf Course Owners Association)がヤマハの製品をオフィシャル・ゴルフカーに認定するなど製品に対する地元の信頼が厚い。現在製造中の「Drive2」シリーズは美しいデザインと豊富なカラー、性能の高さで米国市場に受け入れられている。

市場+陸海空の物流がそろう産業の適地

 yamahaYMMCがジョージア州に拠点を定めた理由について、桑田氏は「米国東海岸にゴルフカーの需要が集中していたから」と語る。ゴルフ場は全米に分布するが、ゴルフカーに関しては「現在でも顧客の6割はこの周辺に集中」(桑田氏)する。市場が大きければライバルも多い。だが、ヤマハはその環境を逆に利用した。「当初からCLUB CARやEZ−GOといったゴルフカーの競合他社が存在しており、サプライヤーがとても充実していた」(桑田氏)ため、原料・部品の調達網の現地化がスムーズに進んだ。さらに、物流インフラの好条件が追い風となった。桑田氏は「陸・海・空路、鉄道網のいずれも発達しており、倉庫も充実している」と指摘。確かに、ジョージア州は世界で最も乗降客数が多く効率の良い空港と、全米の貨物取扱量の8%以上を占める2つの深水港、総延長距離が全米で最も長い陸路ネットワークを持つ。物流インフラは現在も増強が続いており、ジョージア州南東部のサバンナ港から内陸をシームレスにつなぐ鉄道プロジェクトが進行中だという。

市場に近く新たなニーズに対応しやすく

yamaha米国では、ゴルフカーをゴルフ場以外で使用する新たなニーズが生まれている。「大学のキャンパスや空港に加え、最近では限定されたエリアでの移動手段として使われるようになってきている。例えば、ジョージア州の隣のフロリダ州にあるThe Villagesという人口約12万人のリタイアメント施設は、劇場やゴルフ場、レストランやショッピングセンターを備えた広大なコミュニティーで、移動手段としてゴルフカーを購入する住民が増えている」(桑田氏)。YMMCがこうした変化に素早く対応できるのは、市場との近さゆえだ。ゴルフカー以外では、「WaveRunner」の商品名で知られる水上バイクや、レクリエーショナルオフハイウェイビークル(ROV)など、スポーツ分野への進出に力を入れる。「家族や友達と一緒にアウトドアを楽しみ、思い出に残せる」ことをテーマにデザイン・製造しているという。

温かい人情 地元大学から高度人材

yamahaジョージア州に日本企業が根をおろしやすい背景として、桑田氏は「サザンホスピタリティーと呼ばれる人々の温かさ」を指摘する。この土地柄は、労働インフラの充実ぶりに表れているという。YMMCのニューナン工場では1500人超が従事しており、ほぼ全員がジョージア州住民。州の教育サポートプログラムが充実しており、技能労働者を確保しやすい。「セントラル・エデュケーション・センターというプログラムでは、溶接やメンテナンスなど工場が求める一般スキルを施し、即戦力となる人材を育成している」(桑田氏)という。高度人材の確保では世界レベルの研究で知られる地元大学が心強い味方だ。「ジョージア工科大学と素材研究などの分野で長年にわたって協力体制を保っており、インターンの学生がそのまま就職することもある」(桑田氏)。YMMCは昨年に30周年を迎え、本社の日髙祥博社長が来米して記念式典を開いた。開設当初からの従業員44人も参加し、地元に根ざした事業を祝した。

ヤマハはジョージア州ニューナンで1988年からゴルフカーの製造を始めた
ヤマハのゴルフカーは、ガソリン駆動とは思えない低騒音と優れた性能により米国市場で普及した
YMMCではゴルフカー、水上バイクを含む複数カテゴリーを製造しており、総生産数は380万台を超す
米国ではリタイアメント施設の広大な敷地の移動手段などで、ゴルフカーの新たな需要が生まれている
水上バイクはマリンレジャー部門をけん引する
(生産100万台達成記念モデルの前で記念撮影する従業員)

ヤマハがジョージアを選んだ5つの理由

  1. 製品の需要が周辺に集中
  2. サプライヤー企業が多い
  3. 道路、鉄道、航空、港湾が充実
  4. 質の高い労働力が手に入る
  5. 地元大学の研究や人材を活用

yamahaYamaha Motor Manufacturing Corporation of America(YMMC)
企業概要
1988年に、ジョージア州のニューナンにてゴルフカーの製造を開始。現在は、ゴルフカーに加えて、パーソナルウォータークラフト(水上バイク)、四輪バギー車(ATV)、レクリエーショナルオフハイウェイビークル(ROV)の4カテゴリーの製品を生産している。

 

Mr. Kazuhiro Shibata桑田 一宏氏
ヤマハ発動機株式会社 上席執行役員
ヤマハ・モーター・コーポレーション・U.S.A. 取締役社長
1982年ヤマハ発動機株式会社入社、2006年Yamaha Motors CIS LLC取締役社長、11年MC事業本部第2事業部
マーケティング部長、2014年Yamaha Motor Europe N.V.取締役社長、18年1月から現職 

ジョージア州が選ばれる理由

産業インフラ集積、即戦力人材が豊富

「世界一」の空港と北米全土を結ぶ道路・港

 airportジョージア州には15本の州間高速道路が通っており、アトランタ市内を貫通するI-75、I-85、I-20の主要路3本を合わせると全長6400キロ(稚内~那覇の直線距離の2.5倍)に及ぶ。これだけで南はフロリダ州マイアミから北はカナダ、西はロサンゼルスまで(I-20がI-10に合流)、東はバージニア州ピーターズバーグやサウス・カロライナ州フローレンスを直結するネットワークを形成する。一方、大西洋に面するサバンナ港は、輸出入取扱量で全米4位。17年に航路数、大型コンテナの寄港回数でニューヨーク・ニュージャージー港を上回った。アトランタ国際空港は、米国内150都市、海外50カ国75都市と直行便で結ばれている「世界一忙しい空港」だ。14の航空貨物会社が拠点を置き、12万平方メートル以上の貨物倉庫が設置されている。
<アトランタは米国内150都市、海外75都市と直行便で結ばれている>
「ジョージア州の陸海空の交通」(もっと詳しく▶)

1000万超の人口 人材育成を州が支援

georgia techジョージア州の人口は全米8位の1050万人超(2018年時点)。大都市圏のメトロ・アトランタ地域には他州から移住者が多く、現在500万人以上とされる労働力人口は、さらに成長が見込まれる。将来の労働力を育成するため、義務教育から高等教育機関に至るまで、優秀な生徒・学生に対して州が様々な経済的支援を提供している。30近くの奨学金プログラムに加え、1993年から稼働したHOPE奨学金プログラムはこれまで180万人の学生に経済的支援をしてきた。これにより、25歳以上のジョージア州民の30%が学士号以上の学位を取得している。さらに企業が必要とする即戦力育成のためのプログラムとして、クイック・スタートという職業訓練制度を全米に先駆けて設けている。
<ジョージア工科大学など有力大学を抱えるジョージア州は人材育成のため奨学金プログラムに積極的だ>
「ジョージア州の人材・労働力」(もっと詳しく▶)

ソメイヨシノ咲くジョージア 日本とさらに絆

georgia-japan relationshipジョージア州と日本の最初の接点は1853年の黒船来航に遡る。マシュー・ペリー提督率いる艦隊に、当時のジョージア総務局長ジョン・マッキントッシュ・ケルが随行していたのがその始まりだ。1912年、尾崎行雄東京市長がワシントンに桜を寄贈したのは有名な話だが、いつしかジョージア州メーコンにもそれと同じソメイヨシノが咲くようになった。毎年美しい花を咲かせる桜の木を愛した地元の実業家が、その苗木を市民にプレゼントし続けたとことから、メーコン市は現在35万本以上が咲く桜の名所となった。82年以来、毎年開かれる桜祭りは、ジョージア州と日本をつなぐイベントとしても市民に親しまれている。ジョージア州は鹿児島県と姉妹州であり、ジョージア州の11都市が日本の都市と姉妹関係を結ぶなど、日本との交流は一層強まっている。
<桜を通じて日本と縁の深いジョージア州は、日本の自治体と姉妹関係を結ぶ都市が多い>
「日本とジョージア州の深い縁」(もっと詳しく▶

日本企業関係者が語るジョージア州進出のメリットを動画でご覧ください

500超す日系企業拠点と発展するジョージア州
日本の皆様の進出を歓迎します

ジョージア州商務省長官
パット・ウィルソン
ジョージア州商務省は1973年に東京に事務所を開設し、その翌年に設立された在アトランタ日本総領事館も今年45周年を迎えました。現在、ジョージア州には日系企業の事業拠点が500以上あり、3万人以上の雇用を創出していますが、長年にわたりジョージア州の経済発展に多大なご支援をいただきましたこと、また日本の皆様との信頼関係に改めて感謝申し上げます。
ジョージア州は鹿児島県と姉妹州であり、州内10カ所が日本と姉妹都市関係を結んでいることを見ましても、私たちの絆がさらに強くなっていることを実感していただけると存じます。さらに、東京―アトランタ間には毎日直行便が就航しており、お互いの距離もますます近づいています。そのおかげで、私たちも過去7年間に7回も日本を訪れることができ、その素晴らしいお国柄に触れることができました。
投資や貿易、観光のいずれの分野におきましても、日本ならびにジョージア州内の日系コミュニティーの皆様との結びつきを、これからも末永く持ち続けられることを願っております。
ジョージア州のさらに詳細な情報は 
ジョージア州商務省の日本語サイトで入手できます。 日本企業のサポート担当者への問い合わせも可能です。 
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日本国内でのお問い合わせ先
米国ジョージア州商務省日本事務所
〒105-0001東京都港区虎ノ門5丁目11-1オランダヒルズ森タワーRoP1202号室
TEL:03-6402-5035