この特集記事は日本経済新聞社によって制作され、日経電子版にて2019年4月1日から5月31日まで掲載されました。

クボタ マニュファクチュアリング オブ アメリカ コーポレーション

北米市場で「地産地消」
クボタの成功法則とは?

kubotaトランプ政権の国内産業保護政策に伴い、米国市場向け製品は米国内で製造する機運が高まっている。多くの日本企業が北米の新たな立地を模索するなか、参考になるのがジョージア州に進出して30年を超すクボタだ。ジョージア州は日本から直行便が飛ぶ米国南部の玄関。クボタ以外にも多くの日系企業が根付くビジネスの要衝だ。なぜ北米市場攻略の足がかりにジョージア州を選んだのか。クボタの現地法人でトップを務める新井洋彦氏に、ジョージア州に事業基盤を持つメリットを聞いた。

生産拠点、30年かけ拡充

kubota日本ではトラクタなど農機で知られるクボタ。米国市場に進出したのは1970年代と歴史が長い。北米での成功のカギとなったのは、市場ニーズへの適合だ。米国市場参入当初は、農業用トラクタの販売に苦戦していたが、庭園の芝刈り用のコンパクトトラクタとしてインプルメント(装着用作業機器)をつけてテスト販売したところ、予想以上に好評であった。北米の広大な農地ではどうしても見劣りしたクボタのトラクタが、庭園の芝生の上では小回りの利く便利な機械とユーザーの目に映ったのだ。使い勝手がよく、しかも故障の少ないトラクタは市場に急速に浸透していった。トラクタの売り上げが大きく伸びていくなかで、インプルメントの製造拠点として、30年前の1988年にKubota Manufacturing of America Corporation(以下KMA)を設立。その後、需要の伸びに対応し、小型トラクタ、乗用芝刈り機やユーティリティビークル(UV)と呼ばれる多目的四輪車の生産へと拡充した。2005年には、インプルメントを生産するKubota Industrial Equipment Corporation(以下KIE)を設立した。その後、中型トラクタや建機の生産へと拡充した。

​​​kubota東京ドーム20個分の土地に4工場

「KMAとKIE両社の製品の8~9割は北米向けで地産地消が特徴」。KMAとKIEの社長を務める新井洋彦氏は強調する。ニーズを満たす製品を現地生産で供給し、お客様へのリードタイムの短縮を図る。新井氏は「KMAの主力商品は芝刈り機や小型トラクタ、UVで様々な車種を製造している」と語る。北米向けビジネスは順調に推移。KMAは、96年に第2工場、09年に第3工場、17年には5キロ離れた場所に第4工場を設立し、総敷地面積は28.7万坪、東京ドーム20個分以上となった。「第4工場稼働に伴い、それまで第1工場で生産していたUVを移管して生産台数を拡大、伸びる分野の事業に対応している」(新井氏)という。現在、第1工場は芝刈り機、第2工場は芝刈り機と小型トラクタを生産。「出荷台数は18年に12万台超となり、近年右肩上がりで増加している」と新井氏は胸を張る。15年に小型トラクタなど累計で100万台を達成した。

​​​kubota地元ディーラーやサプライヤーと結束

クボタのUV「RTVシリーズ」は北米市場の主力製品に成長、一部は19年から日本に逆輸入することになった。UVは米国の農場、牧場での見回りや荷物運び、公園の清掃、ハンティングなど様々な場面で活躍している。なかでも従来のモデルに比べ高速仕様の「SIDEKICK」が人気上昇中だという。ヒット製品を生み出す原動力は「クボタはディーラーとの絆が強く、彼らの声を通してマーケットのニーズに応じた商品を提供してきた」(新井氏)というマーケティングおよび開発の現地化だ。製造では、クボタ生産方式(KPS)と呼ばれるモノづくりノウハウを海外拠点で初めて導入。リードタイム短縮に帰結する在庫削減、生産性向上を「サプライヤーと一体となって取り組んでいる」(新井氏)点が強みだ。工場敷地内には研究・設計棟や走行試験コースを併設し、一気通貫のモノづくりに余念がない。

​​​kubota巨大市場、州の人材育成支援など決め手
北米で成功したクボタが、ジョージア州に拠点設立を決めた理由は3つ挙げられる。まずマーケットである。ジョージア州を中心とした米国南東部は冬も比較的温暖な気候に恵まれており、一般家庭でも数千、数万坪の敷地を所有しているケースが珍しくない。クボタは芝刈りをはじめとしたガーデニング機器が必需品であることに商機を見いだし、その市場に製品をタイムリーに供給できる立地を確保した。次に、優秀な人材を集めやすい点である。複数の大学が存在、また州の教育サポートプログラムが充実し、企業の即戦力を育成するクイック・スタートという職業訓練制度も設けられている。最後に、州政府が様々な税優遇措置を提供し続けており、企業が進出しやすい環境が整っている。

​​​kubota「ファミリーデー」で親睦、コミュニティーと密接に

現地の正規従業員は約2400人で、ほぼ全員がジョージア州居住者だという。毎年、「ファミリーデー」を開催し、社員とその家族を招待して親睦を図っている。一方、日本人駐在員は50人ほどであるが、駐在員が多く住むダルース市には日本食レストランをはじめ、アジア系スーパーもあるため、普段の生活に不便はないという。州都アトランタ市と主要都市のコロンバス市には日本語補習校があるほか、日本語と英語の公立校「インターナショナル・チャーター・アカデミー・オブ・ジョージア」が開校するなど、日本人駐在員と家族の生活環境が整備されている。「当初は市場があったという地理的な理由から立地を決めたが、今日まで成長を続けてこられたのは地元の人々のおかげだと思う」と新井氏が言うように、コミュニティーとのつながりが企業の成功を左右することに改めて気づかされた。

クボタは米国市場での生産拠点として1988年にKMAをジョージア州ゲインズビルに開設した
主力商品のUVは現地のニーズに対応して様々な車種を生産する
「RTV」などを生産するジョージア州の拠点は、KPSと呼ばれるモノづくりノウハウを海外拠点で初導入した
小型トラクタなどの累計100万台記念式典では和太鼓のパフォーマンスが披露された
クボタは毎年開く「ファミリーデー」に社員とその家族約3000人を招待して交流を深める

クボタがジョージアを選んだ5つの理由

  1. 巨大なマーケットが身近に
  2. ディーラー販売網が充実
  3. 州の人材教育支援が手厚い
  4. 州が様々な税制優遇を提供
  5. 日本人向け学校など生活環境

kubotaKubota Manufacturing of America Corporation(KMA)
企業概要
1988年の設立時には「フロントローダー」や「バックホー」といったトラクタのインプルメントの製造から開始。94年、乗用芝刈り機により「緑地と庭園の芝草管理機器業界(Outdoor power equipment industry)」へ参入した後、2000年には「BXシリーズ サブコンパクトトラクタ」の導入で飛躍的に事業を成長させた。04年に「RTV-900」の導入でユーティリティービークル(多目的四輪車)市場に参入。

新井洋彦氏
株式会社クボタ 執行役員
クボタ・マニュファクチュアリング・オブ・アメリカ・コーポレーション社長クボタ・インダストリアル・イクイップメント・コーポレーション社長1986年久保田鉄工(現クボタ)入社、2012年モノづくり統括部長、14年筑波工場長、18年1月から執行役員就任、現職

ジョージア州が選ばれる理由

州の手厚い税優遇、日本企業に追い風

​​​kubota毎年「ジャパンフェス」 日本と絆
日本とジョージアの関係強化は、1973年にジョージア州商務省が東京に事務所を開設し、その翌年に在アトランタ日本国総領事館が設立された時に始まる。2018年時点で400社以上の日系企業が州内に500以上の事業拠点を構え、3万人以上の雇用を創出している。日本貿易振興機構(ジェトロ)がアトランタに拠点を置くほか、ジョージア日本人商工会では日米の相互理解、友好関係を促進している。東京とアトランタの間は毎日、直行便が飛ぶ。アトランタで30年以上続くジャパン・フェストというイベントでは、100以上の出展者が参加し、日本食や日本の特産物を紹介、毎年2万人以上が訪れる。メーコン市では毎年桜祭りが開かれるなど、日本との絆は深い。
<毎年開かれる桜祭りやジャパン・フェストが日本とジョージア州の交流を促進する>
「日本とジョージア州の深い縁」(もっと詳しく▶

​​​kubota世界的なフィンテック集積地、産業の幅広く
18年時点で、ジョージア州に本社を置く企業のうち21社が米経済誌の有力企業番付である「フォーチュン500」に選ばれている。最近の特徴としてはフィンテック産業、デジタル・エンターテインメントなどが挙げられる。フィンテック産業においては全米のクレジット、デビット・カード、ギフト・カード取引の約3分の2がジョージアに拠点を置く企業によって処理されていることから、「トランザクション・アレー」というニックネームもつけられているほどだ。ジョージア州は映画、テレビ、音楽、ビデオ・ゲームなどデジタル・エンターテインメント産業に対し、30%を上限とした税優遇措置を提供するなど、誘致に意欲的に取り組んできた。州内20の大学、カレッジではデジタル・エンターテインメントのコースを設置し、産学一体となって業界をリードしている。
<ジョージア州はカード関連などフィンテック企業が集積し「トランザクション・アレー」と呼ばれる>
「ジョージア州の多彩な産業」(もっと詳しく▶)

​​​kubota2019年から州法人税率下げ 税優遇メニュー豊富
ジョージア州では、新規事業展開や事業拡張を考える企業に対して、様々な税優遇措置を提供している。州の法人税率は2019年1月1日から5.75%に引き下げられ、全米平均よりも低くなっている。一定条件の下で新規雇用を創出した企業には雇用税額控除制度が適用されるほか、特定地域で一定期間以上事業を継続している企業は投資税額控除制度が利用できる。ほかに、再訓練税額控除制度、託児所税額控除制度、研究開発税額控除制度、中小企業への税額控除制度、港湾使用税額控除制度、売上税・使用税免除、資産税軽減など、企業の税負担を軽減する制度が多数設けられている。米CNBCテレビが毎年実施している「アメリカズ・トップ・ステート・フォー・ビジネス」では2013年以来常にトップ10入りし、ビジネスのしやすい州であると評価されている。
<ジョージア州は新規事業や事業拡張を推進する企業を税優遇で支援>
「ジョージア州の税優遇」(もっと詳しく▶

日本企業関係者が語るジョージア州進出のメリットを動画でご覧ください

500超す日系企業拠点と発展するジョージア州
日本の皆様の進出を歓迎します

ジョージア州商務省長官
パット・ウィルソン
ジョージア州商務省は1973年に東京に事務所を開設し、その翌年に設立された在アトランタ日本総領事館も今年45周年を迎えました。現在、ジョージア州には日系企業の事業拠点が500以上あり、3万人以上の雇用を創出していますが、長年にわたりジョージア州の経済発展に多大なご支援をいただきましたこと、また日本の皆様との信頼関係に改めて感謝申し上げます。

ジョージア州は鹿児島県と姉妹州であり、州内10カ所が日本と姉妹都市関係を結んでいることを見ましても、私たちの絆がさらに強くなっていることを実感していただけると存じます。さらに、東京―アトランタ間には毎日直行便が就航しており、お互いの距離もますます近づいています。そのおかげで、私たちも過去7年間に7回も日本を訪れることができ、その素晴らしいお国柄に触れることができました。
投資や貿易、観光のいずれの分野におきましても、日本ならびにジョージア州内の日系コミュニティーの皆様との結びつきを、これからも末永く持ち続けられることを願っております。

ジョージア州のさらに詳細な情報は 
ジョージア州商務省の日本語サイトで入手できます。 日本企業のサポート担当者への問い合わせも可能です。 
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日本国内でのお問い合わせ先
米国ジョージア州商務省日本事務所
〒105-0001東京都港区虎ノ門5丁目11-1オランダヒルズ森タワーRoP1202号室
TEL:03-6402-5035